あらゆるカジュアル服に合わせて
翻訳:Kohki Kazami
ロリス・ローゼンミュラーが真価を発揮する場所は、オフィスでも結婚式場でもない。ルールを守って静かに過ごす場所ではなく、自分を解放する場所だ。爆音でジャズが流れるバーであり、旅先であり、嵐の中、森の中だ。
こういった場所では、カジュアルな服を着る。それなら、カジュアルな服に合う靴でなければならない。
一般的に、ビジネス・フォーマル用のパンツは、素材に余分な遊びや皺を作らず、色を均一にする。そのイメージを一語で表現するなら「収縮」だ。この足元に求められるものは、ボリュームがない靴だ。
それに対して、カジュアル用のパンツは、素材に余分な遊びや皺を作り、柄や色の濃淡を持つ。そのイメージを一語で表現するなら「膨張」だ。この足元に求められるものは、ボリュームがある靴だ。
ビジネス・フォーマル用のパンツに対してボリュームがない靴を選ぶことで、あるいは、カジュアル用のパンツに対してボリュームがある靴を選ぶことで、脚と足元が繋がり、脚が足先まで続く錯覚を生む。
その反対に、ビジネス・フォーマル用のパンツに対してボリュームが大きすぎる靴を選べば、あるいは、カジュアル用のパンツに対してボリュームが小さすぎる靴を選べば、脚と足元が分断され、脚が短く見える。
日本において「革靴」あるいは「ドレスシューズ」と呼ばれる靴の多くは、ボリュームが小さすぎる。そのため、カジュアル用のパンツに合わない。カジュアル服に合う「革靴」「ドレスシューズ」を作るなら、ボリュームを出す必要がある。
だが、ただボリュームを出せば良いということではない。
爆音でジャズが流れるバー、旅先、嵐の中、森の中。こういったシチュエーションだけに対応するなら、アウトドアやストリート等、限られたカジュアル服だけに合えば良い。限られたカジュアル服だけに合う革靴を作るなら、ただ甲を高くする、ただ幅を広くするといった、単純なアプローチでボリュームを出せば良い。
そのバーを出て、ホテルのラウンジで飲み直す。旅先で老舗旅館に泊まる。森の中でプロポーズをする。こういったシチュエーションにも対応し、「あらゆる時に、あらゆる場所で」を現実にするためには、アウトドアやストリートから、モード、コンサバ、ドレスカジュアルまで、幅広いカジュアル服に合うべきだ。幅広いカジュアル服に合う革靴を作るなら、全てのパラメーターを徹底的に弄り倒すしかない。
当サイトで公開する靴の企画開発には、アウリールクラネルト、ウロスガリエが参加している。彼らは、芸術家や舞台役者からの特殊なニーズに応えてきた。例えば、彫刻、絵画、カフェ、演目、衣装、様々なものに合わせて靴を制作してきた。
ギレスベルガーは、彼らの力を借りることで、幅広いカジュアル服に合う革靴を設計した。幅・奥行き・高さ・甲やトゥの丸み、ソールの厚さ、ソールの剛性、トゥスプリングの大きさ、脚長効果、素材の厚みや皺の入り方等、全てのパラメーターを調整し、プロトタイプを作る。プロトタイプを色んな服装に合わせて、修正点を発見し、再度プロトタイプを作り、再度テストをする。これを繰り返した。
オフィスや結婚式場、ルールを守って静かに過ごす場所で履くための靴を探しているなら、ロリス・ローゼンミュラーはベストな解ではない。より最適な解が他にある。例えばそれは、英国のビスポークシューズだ。
だが、自分を解放する場所で履くべき靴を探しているなら、ロリス・ローゼンミュラーがベストな解だ。そういった場所において、これよりも最適な解は他にない。
この靴は、ビスポークメーカーらしい美しさを持ちながら、カジュアル服に馴染み、全身をエレガントにブラッシュアップする。
普段履いているスニーカーやブーツを、ロリス・ローゼンミュラーでリプレイスすることで、日常はもっと上質なものになる。