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The Tree, not Wood - Gen2

22,900
(税込・送料込)
  • 上記の商品画像は、Gilles用のツリーをサンプルとしています。他モデル用のツリーもございます。
  • 入荷予定がなく、不定期に一点ずつ入荷するため、随時在庫チェックをお願いいたします。

The Tree, not Wood

Elmar Blon, Gießbach München
翻訳:Kohki Kazami

良いツリーを作るには

シューツリーの機能は、二つに大別される。

第一に、靴を良い状態で履き続けられるようにする、道具としての機能だ。道具としての機能は、靴にテンションをかけることで型を整える機能(形状補正)と、ライニングに対して、水分を吸収したり油分を与える機能(環境調整)に分別できる。

第二に、オブジェとしての機能だ。靴をオブジェとして映えるようにする機能であり、ツリーそのものがオブジェとして映える機能である。

当然、全ての機能を同時に追求するのは困難だ。

例えば、形状補正を優先したフォルムは、必ずしもオブジェとして映えるとは限らない。オブジェとして映えることを優先するなら、綺麗に仕上げられる点で、密度の高い木材を採用すべきだが、そうすると環境調整に劣る。

これらの例の通り、ツリー作りはトレードオフの性質を含むものである。靴やレザーの生産と同様である。このトレードオフを認識し、それに向き合うことで、良いツリーが生まれる。

既成靴用の純正ツリーの価格の上限は、三万円が適正だと考える。それに従うなら、トレードオフを完全に解消することはできない。コスト予算が不十分だからである。

どの機能を優先し、どの機能を優先しないのか、機能の取捨選択を行い、限られたリソースを重要な機能に割り当てる意識が必要だ。

そのツリーは、メインか、付け合わせか

一人の靴好きとして、私は以下のように感じていた。

一部のブランドは、機能の取捨選択とリソースの割り当て意識を持たないまま、なんとなく形が合う、なんとなくカッコいいものを、それほどの熱を入れずに売っている。靴がステーキだとするなら、ツリーは隣で彩りを与えるだけのブロッコリーやニンジンになっている。

それに違和感を覚えつつ、純正品を使えば、なんとなく気持ち良いという心理のみに起因して、純正ツリーを買ってきた。

靴好きの仲間に向けて、自らが企画する立場に回った今、メインの付け合わせではなく、それ自体がもう一つのメインになるツリーを出さなければと思う。心理ではなく、その機能が必要だという明確な需要に起因して購入されるものを出さなければと思う。

形状補正の重視

ロリス・ローゼンミュラーの靴は、実用性を徹底的に追求している。その靴には、道具としての機能を最優先したツリーが相応である。

道具としての機能のうち、環境調整を優先するなら、シダーのような密度の低い木材を無垢で採用すべきだ。だが、そうするとツリーが容易に摩耗するため、定期的な交換が必要になる。それは、何十年と愛用される靴に相応でない。また、環境調整は、汎用品や、布や紙等でも担える。

以上を考慮して、今回の企画では、道具としての機能のうち、形状補正を最優先することにした。

ロリス・ローゼンミュラーのアトリエは、同じ靴を複数用意し、それぞれに異なるツリーを使いながら数年着用する対照実験を実施している。この対照実験により、靴を良い状態で履き続けられるようにするために、どのようにテンションをかけるべきか(どのように形状補正すべきか)を導き出した。

ソールの反りが大きくなるに伴い、トゥスプリングが大きくなり、履き皺が深くなる。トゥスプリングが大きくなると、カジュアルな印象(ブーツライクな印象)に寄り過ぎ、履ける場面や合う服装が限定されていく。また、履き皺が深くなると、革の内部繊維に過度な負荷が掛かり、クラックが発生する。

着用後に、中心軸が一致するツリーを入れることで、反りが戻る。中心軸がズレたツリーを入れると、反りの戻しが不十分になり、トゥスプリングが大きくなり、履き皺が深くなっていく。

中心軸を一致させるために、ツリーをラストと同型にしてみる。だが、そうすると、履き皺が完全に伸びてしまい、やがてクラックが発生する。紙を折って戻すことを繰り返せば破れるが、同様のことが起きるのだ。

形状補正の観点からは、靴と中心軸が一致しつつ、履き皺を完全には伸ばさないフォルムが理想である。それは、ラストをベースにしつつも、屈曲部やサイドを適切に削いだフォルムである。

今回の企画では、形状補正を最優先したツリーとして、以上のフォルムを維持する(摩耗しないようにする)ため、高密度のブナ材を採用し、ニスで仕上げた。

いかに、トレードオフと向き合ったか

ニスで仕上げる(木材を無垢で使わない)ことで、ツリーの摩耗は防止できるが、ライニングから湿気を取る機能(環境調整)が失われる。

そこで、メーカーから敢えて無垢の状態でギレスベルガーに納入し、ベルンシュタインフィニッシュで培った技術でニス塗りを施す。ベルンシュタインフィニッシュは、水や汚れをしっかり弾きつつ、オイルやクリームが浸透するようにした加工だが、その技術をツリーの制作に流用した。

全くの新しい試みであり、実証データも乏しいため、その効果の大きさや持続性は不透明と言わざるを得ない。だが、メーカーでニス塗りした通常品に比べ、若干の改善を感じられる。

形状補正を最優先した結果、ツリーのフォルムはありふれたものになった。このままでは、オブジェとしての魅力に欠ける。

そこで、取っ手とエンブレムの素材に、無垢の真鍮を採用した。定期的に磨いて光らせたり、エイジングさせるといった、オブジェとしての楽しみをプラスした。

エンブレムにモデル名を刻印したのも、同様の意図による。ロリス・ローゼンミュラーは、履き手に対して人生の伴侶になるものであり、一人格となるものだ。その靴に、その靴の名が刻印されたツリーを入れれば、深い喜びを与えるアートになる。

The Tree, not Wood

単なる付け合わせではないかと感じながら、なんとなく気持ち良いという心理で、純正ツリーを購入する。

購入当初は、高い満足感があるが、傷や汚れが付くと、満足感は薄れていく。「高いお金を出して、純正品を買う必要がなかったのでは」「汎用品でも良かったのでは」そんな考えも浮かんでくる。

もはや、それは私たちの生活や心に根を張っていない。それは "Tree" ではなく、"Wood" だ。

だが、このツリーは違う。

対照実験を踏まえた、形状補正の追求。形状補正を優先することで失われる他の機能の回復、すなわち、トレードオフとの対向。

こうして生まれたツリーは、機能への確かな需要で、私たちの生活や心に根を張り続けるものだ。

これは "Wood" ではなく、"Tree" だ。

Rolis Rosenmüller
" The Tree, not Wood - Gen2 "
Product Planner : Gießbach Schuhgilde
  • Giessbach Schuhgilde が、このプロダクトを企画開発しました。イタリアおよびフランスのメーカーにおいて、メーカーの標準製品をベースに、型をオリジナルに変更して製造し、ギレスベルガーで仕上げ加工しています。
  • 複数拠点間の輸送を経るため、また、木材という素材の特性上、僅かな傷や擦れが発生します。必要に応じて補修を施しますが、その場合は補修の跡があります。
  • 一点ずつ手作業で仕上げ加工するため、返品・交換は不可とさせていただきます。
  • 何卒ご理解のほど、よろしくお願い申し上げます。
Official
LINE
"The Life Sync Gear"
Aurel Klanert, Gerhard Gillesberger, Uros Galie

このプロダクトは、3つのアトリエが共同で企画開発し、Gerhard Gillesberger が制作する。